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患者さんの健康と尊厳を守る医療を実践します
皆さまこんにちは。院長の日浅芳一(ひあさよしかず)です。職員の方や一般の方々に徳島赤十字病院を少しでも身近に感じていただきたいと考え、「院長ブログ」をホームページに加えました。拙い文と思いますが多くの方が目を通して下さることを願っています。
徳島赤十字病院
院長 日浅 芳一

2018年05月01日「季節のめぐりと暦」

毎日朝夕の徒歩通勤に使う小松島港、しおかぜ公園、遊歩道は季節の移り変わりを知らせてくれます。冬から初夏の今の時期にかけては、荒々しかった港湾内の波が穏やかになり、そして今は"のたりのたり"としています。花々も山茶花が散り始めると、椿が膨らみやがて桜が咲き、今は色とりどりのツツジや小松島市の花であるハナミズキが満開です。暦に頼らなくとも、冬が過ぎた、春がやってきた、今年の初夏の訪れは早いなど「自然暦」によって季節が実感できます。

2月12日付、毎日新聞朝刊のオピニオン欄に美学者、金田晉(かなた・すすむ)氏の「旧暦併用のススメ」というインタビュー記事が掲載されていました。いま普通に使っている太陽暦(グレゴリオ暦)を「新暦」と呼ぶのに対し、旧暦というのは太陽、地球、月の運行を基準とした太陰太陽暦で、幾種類かありますが、最も精度の高いものが幕末に作られた「天保暦」だそうです。また、啓蟄(けいちつ)、穀雨、芒種(ぼうしゅ)、霜降(そうこう)など農耕や漁業に欠かせない季節の節目を示す二十四節気(当ブログ2012年9月「院長のぼやき」参照)も取り入れられました。しかし、現在の新暦に旧暦の二十四節気や節句、雑節をそのままあてはめたことで実態とそぐわないことが多々あります。例えば旧暦の七夕は、今年は新暦の8月17日の夜にあたります。この時期は彦星(わし座のアルタイル)と織姫星(こと座のベガ)が夜空の高い位置にあり見やすいのですが、新暦の七夕にあたる7月7日は残念ながら梅雨空です。このように先人達が築きあげた季節感や風土に関する文化は、旧暦を知ることで味わうことができます。

また金田氏は旧暦の生命線ともいえる「月」に、日本人の関心が薄れていることを嘆いています。日本文学は、源氏物語を始めとして月に関する描写が実に多いことが特徴的です。英語では"moon"でしかない月が、朧(おぼろ)月、寒月(かんげつ)、望月(もちづき)、十三夜、眉月(まゆづき)等、異なった観点からの表現が豊富にあります。国際基準として太陽暦は必要不可欠ですが、旧暦を意識した生活を取り入れることで、日本の豊かな四季や自然を楽しむことにもつながると金田氏は述べています。現在でも韓国や中国をはじめとしたアジアの人達はうまく旧暦との併用を行っています。中華圏で旧正月を祝う春節(今年は新暦の2月16日)は、その時期に休みを利用して多くの外国人観光客が訪れるようになったことで日本でも知られる様になりました。また、中国ではバレンタインデーを2月14日の他にも祝う慣習があるようです。旧暦の7月7日は七夕伝説にちなんで情人節(=恋人の日)と言われ、その日は大きな花束を持った男の子達を街中で見かけるそうです。旧暦を意識した生活を取り入れ、アジア人としての共通文化を共有することで、より円滑なお付き合いができるのでないかと思います。

日本の「天保暦」が優れていることは冒頭で書きましたが、その前身である貞享(じょうきょう)暦を作った渋川春海の苦労を描いたのが「天地明察」(冲方丁著、角川文庫)です。朝廷の持ち物であった暦を庶民にも役立つものに変えていく苦労を水戸光圀や幕府重臣の保科正之を絡めて書かれています。暦とはいかなるものなのかを理解するうえでも非常に興味深い本でした。自然暦、旧暦を日常生活の中で意識することで、若い人たちにも季節を楽しんでほしいと思います。

2018年04月01日「元気で長生きして欲しい」

2015年 平均寿命ランキング

昨年末から今年にかけて厚生労働省から、2015年平均寿命ランキングと2016年健康寿命ランキングが相次いで公表されました。日本が世界に冠たる長寿国になって久しいですが、国内でも地域によって差があることが分かります。平均寿命の上位には滋賀県や長野県がきますが、私が注目したのは男女とも最下位である青森県です。5年に一度発表される平均寿命のランキングで青森県は男性が9回連続、女性も5回連続最下位という驚くべきものです。

この発表がなされた昨年12月13日、私は会議でたまたま青森県八戸市に滞在していました。テレビや新聞はこぞってこの話題を伝えていました。県保健福祉課の方は「高血圧が多く、食塩の過剰摂取を防ぐため昆布等のダシ味の普及に努めている。少しずつ成果は上がっている」とインタビューに答えていました。しかし、知り合いの病院関係者に聞くと、話はかなり違っていました。“青森県民は大のラーメン好き。朝からラーメンという人も多い。スープは他県のものと比べると塩辛いが、それでも足りずに醤油を付け足す人がかなりいる。水と無料サービスの米飯で塩気を中和させつつ食べる味が何とも言えない。また、多量飲酒者が多く喫煙率も高い。何よりも問題なのは、「色々制限してまで長生きしたくない」という健康意識の低さだ”と話していました。実際、厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」によりますと、BMI、食塩摂取量、喫煙習慣(男性)、歩数(女性)は全てワースト10に入っています。

2016年 健康寿命ランキング

これを対岸の火事と笑っていられないのが徳島県です。徳島県の糖尿病の死亡率が長い間ワースト1であったことを思うと他人ごとではありません。平均寿命は男性33位、女性40位で全国平均よりも各々0.43歳、0.33歳短いのです。さらに健康寿命(健康上の理由で日常生活を制限なく送ることができる期間)に至っては男性がやっと最下位を抜け出しワースト3位、女性はワースト4位です。先述の調査結果ではBMIがワースト16位(男性)、歩数はワースト6位(男性)、15位(女性)と歩かない実態が反映されています。これは糖尿病による死亡率が高いことにもつながっていると考えられています。

予防医学の重要性を説く中国の小話に春秋・戦国時代(B.C.770~B.C.221)に扁鵲(へんじゃく)という名医の話があります。彼は触診の創始者としても有名であり、二人の兄も医師でした。あるとき魏の文王が「おまえ達三兄弟のうち誰が一番名医か」と尋ねました。扁鵲はすぐさま「長男が一番、次が次兄、私は一番劣る」と答えました。王は「なぜ二人の兄は有名でないのか?」と聞きました。扁鵲は「長男は患者が病気になる前に本人も気づかないうちに治す。次兄は病気がまだ軽いうちに治す。私は病気が重くなってからしか治せない」と答えたというものです。

徳島県医師会が中心になって「"もう1000歩"運動」を行っていますが、行政や自治会等が一体となってこうした運動を進めたらより高い効果を得られるのではないかと思います。私たちも徳島健康フォーラムの事業である「生活習慣セミナー」を毎年5月と9月に開催し、医者と一緒に歩くイベントを15年以上続けています。歩くことは肉体的運動のみならず、脳の活性化にもつながります。
県民の皆さんの健康長寿を祈念しています。

毎年開催「生活習慣セミナー」で参加者が医師らとウォーキング
毎年開催「生活習慣セミナー」で参加者が医師らとウォーキング
院長プロフィール
ひあさ・よしかず
ひあさ・よしかず
1973年鳥取大学医学部卒。同大学付属病院にて臨床研修後、徳島大学大学院卒。北九州市小倉記念病院循環器科医長を経て、87年小松島赤十字病院(現・徳島赤十字病院)第三循環器科部長、2002年副院長、2011年より院長。医学博士。日本のカテーテル風船治療の草分け的存在である。