低侵襲手術に対する麻酔

徳島赤十字病院

麻酔科 若松 成知

近年医療技術の発展とともに、幅広い分野において低侵襲手術が行われるようになりました。当院でも、多くの診療科において内視鏡下の手術、ロボット手術、血管内手術といった低侵襲手術が日々行われております。

ただし、低侵襲手術は従来の手術方法と異なる点が多く、術式によっては全く異なる手術と言えるものもあります。それらに対応するには麻酔科も相応の知識とノウハウの蓄積が必要になります。また、低侵襲手術をスムーズに行うには術者はもちろん、手術室スタッフにも特有の技術・経験が必要です。その点、当院は多くの手術件数があり、意見交換も盛んに行っており、常に新しい知識を取り入れております。

低侵襲手術という名前ではありますが、局所麻酔で行えるような手術は少なく、ほとんどは全身麻酔が必要になります。当院では全身麻酔で手術を受けた患者は手術直後、回復室へと移動し、全身状態の観察、痛みや吐き気といった手術直後に生じる問題への対応を行ったあとで病室に帰っていただくシステムになっております。このシステムを実施している施設は少数ですが、速やかな回復および患者の安全のため、この手術直後のケアは非常に重要であると考えております。

低侵襲手術は従来法に比べ手術の傷が小さいのが特徴ですが、一つひとつの傷は小さくとも、それらが複数あれば痛みは無視できないものとなります。低侵襲手術の真価を発揮するには少ない侵襲で手術を完遂すること、痛みを中心とする術後の合併症が少ないことの2つがそろっていることが重要です。当院では上記の回復室でのケアに加え、硬膜外麻酔や末梢神経ブロック（伝達麻酔）などの手段を駆使して、術後の痛みの軽減に努めております。